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Day.16-2002.07.29 Day.15 へもどる
 北へ向けた旅の始まりの日。集合場所は、バッパーの前。指定された時間は早朝5時30分だった。しかし、待てども待てどもバスは来ない。時間通りにバスが来ないことにはだんだん慣れてきてはいたけれど、何と言っても時間が時間だけに寒かった。バッパーの建物内と道路を行ったり来たりしながら、バスを待ち続けること20分。ようやくそれらしい車がやってきた。ドライバーさんは人の良さそうなおじさん。中に乗っていたのはヨーロピアンの女性が2人。どうやらこの人たちが“遅れた原因”らしい。

 私達を乗せたバスは更に1箇所をまわり、バスロータリーの様な所に到着した。そこで待っていたのは一回り大きなバスと数人の人々。そしてイライラとした様子を絵に描いたような男性。これが、“史上最悪ガイド”との出会いだった。

 参加者全員を乗せて、バスは出発した。私達はあるツアー会社に申し込みをしたのだが、実際は委託された別会社が催行していた。だからという訳ではないだろうが、この男性ガイド、最初から何かいい加減な空気に満ちていた。

オーストラリアではこのタイプのバスをよく目にする。
後部の車には、参加者の荷物と食事道具が入っている
 他のツアーと同じく、ガイドさんは運転しながらマイクを通して色々な話をしてくれる。そしてこの男性ガイド氏が最悪なのは、マイクを通して飴をなめる音と、げっぷをする音をみんなに提供することだった。そして極めつけは、食べ終わったりんごの芯などを、運転席からポイ捨て。
 ツアー開始から1時間後に、私達はこのツアーに対する希望を失っていた。

 更にこのツアーには、英語圏以外の人が半数くらい参加していた。しかしこのガイド、そんなことはお構いなしに、大事な事もべらべらと同じペースで話し続け、“もっとわかりやすく話して”というリクエストも無視。びっくりである。

 ガイドに幻滅しながらも、私達は“ベストシーズンの西オーストラリア”に気持ちを集中させ、盛り上げていくことにした。

 最初の訪問地は“ザ・ピナクルス”。ナンバン国立公園(Numbang National Park)の中にある、砂漠の中に石灰岩の塔が立ち並んだ、不思議な空間だ。中には具体的な形状を持ったものもあるが、全てが自然にできた、というところがすさまじい。思い思いに歩きながら、“ここは昔、海だった”という遠い歴史に思いをはせた。

石灰岩が立ち並ぶ“ザ・ピナクルス”。不思議な空間だ
 ピナクルスを見学後、私達はツアーで最初の食事を摂った。食事の場所は国立公園の駐車場。食事はサンドイッチ。サンドイッチといっても、ハムやトマトをツアー参加者が分担して切って用意し、みんな思い思いの具をパンにはさんでいく、という形だ。こういったツアーの昼食は、全て共通していた。

 この昼食時に、私達は衝撃の体験をする。食事に使用される器は、いわゆるアウトドア用のアルミ容器だ。そして、食べ終わった人は、食べかすなどのごみを捨て、バケツの中に入れる。バケツの中にはお水と洗剤が入っていて、食器はそこで“サッと”スポンジでこすられた後、ふきんで水気をふき取り、コンテナにしまわれる。そう、“ゆすぎ”がないのだ。

 オーストラリアは一年中水不足の国だ。そして政府を含め、人々は“水を大事に”という。そしてオーストラリアの多くの家庭では、シンクに水を溜め、洗剤を入れて食器を洗い、ゆすがず泡のついたままふき取る、という洗い方が一般的だ。
 うわさには聞いていたが、シェアハウスで初めてこの光景を見た時、私達はひっくり返った。どうやらその洗剤は、洗い流さなくてもよいタイプらしいのだが、それにしても、泡のついた食器が置かれているなんて。そして、オーストラリアの人は結構食器洗いに気を使わないらしく、洗われたはずの食器がかなり汚いのだ。

思い思いに自分の“テーブル”や“椅子”を見つけてランチを食べる
 3日分の食料を積んで移動するツアーでは、お水は更に貴重品だ。ということで、この場合この食器洗い方法には積極的に賛成しなければいけないのだが、やっぱり、最初の数回は辛かった。持参のティッシュでお皿を拭いてから使っていたものだ。

 午後、私達は“ジェラルトン”という町に到着した。そして、この日最後にして最大の楽しみだった“砂すべり”をすべく、海岸へ向かった。砂すべりができるこの場所は、傾斜が45度はあろうかという、かなりな急勾配だ。私達はスノーボードのように立って滑る事を期待していたのだが、残念ながらここで体験できたのは、板に座るタイプのボードだった。

この斜面は本当にすごい。ついつい手を地面に・・・
 日本で最後にスノーボードをして以来、3年ぶりの斜面にみんなワクワクする。ぶつからないよう順番に、坂の頂上から滑り降りた。2人で滑ると体重がかかる分勢いが増すことがわかり、猛は引っ張りだことなる。滑り降りた後は、地球上どこへ行っても共通の“登って戻る”という作業が待っているのだが、それでもかなり楽しくて、何回も滑り降りた。

 砂浜で十分遊んだ後、一行はこの日の宿泊施設へと向かった。お夕飯はバーべキュー。“バーベキュー”といっても、日本のようにお肉やシーフードがあって、最後は焼そばか焼きうどんで締める、といった楽しいものではない。鉄板の上に乗っているのは、硬い牛肉かクセのあるラム(羊肉)またはソーセージ。そして玉ねぎ。主食はパンで、みんなパンにお肉をはさんで食べるといった感じだ。恥ずかしながら玉ねぎが食べられず、どちらかと言うと肉類が苦手な菜津子は、かなり苦戦の様子。代わりに、といっては何だが、猛とキヨ君はもりもり食べているご様子。まあ、1日だけなら“貴重なオージー体験”といったところか。

 夕食後は、それぞれが思い思いの時間を過ごした。朝早かった事と、次の日の朝も早いこと、そして周りにこれと言った娯楽施設もなかったことから、私達は早めにそれぞれの部屋に引き揚げた。
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