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Day.30-2002.08.12 Day.29 へもどる
 一日まるごと、バングル・バングルで過ごしたこの日。バスでの移動を繰り返しながら、往復5kmを初めとする3種類のコースを歩いた。

 バングル・バングルは“パヌルル(Purnululu)国立公園”の一部として存在する山脈の名前だ。“バングル・バングル”はアボリジニの言葉で“砂の山”を意味する。

 オーストラリアには、アボリジニの言葉を使った地名や動物の名前等が多くある。有名なものが“コアラ”や“カンガルー”だ。コアラは“水を飲まない”と、その生態から名前が付けられた。そしてカンガルーはというと、、、


 オーストラリア大陸に上陸したキャプテン・クック一行。探検中飛び跳ねる動物を目撃した隊員の1人が、原住民アボリジニに尋ねた。

“What is that?(あれは何?)”

“Kangaroo(カンガルー)”

 この会話で、この動物が“カンガルー”という名前であることがわかった、らしいが実はこの“カンガルー”という言葉、アボリジニの言葉で“わからない”を意味するそうだ。ただし、この説も?がつくということだが。。。

近くで見ると、オレンジ色と黒の縞模様がくっきりと見える


 “砂の山”ことバングル・バングルは、オレンジ色と黒色の層からなる。外側はとても硬いのだが、内部はシリカで出来ているためとても柔らかい。何千万、何億万年にわたって堆積された砂岩が、これまた気の遠くなるような長い年月をかけて風雨により浸食され、現在の景観を呈しているのである。乾いた岩の間から、青々とした植物が見えるのが何となく不思議な印象を受ける。

高ーく高ーくそびえ立つ岩の壁。
迷い込んでしまったような錯覚に陥る


 太古の昔から積み上げられてきた砂の山の間を、私達は黙々と歩き続けた。こんなことを言ってはバチが当たりそうだが、最初は自然の営みに圧倒的な尊敬と神秘を感じながら歩いていたバングル・バングルも、2時間、3時間と続くうちに“岩場のハイキングコース”に思えてきてしまう。もちろん、“すごいなぁ”とか“不思議だなぁ”と感じることに変わりはないのだが、だんだん目的が“歩く”事に変わってしまうのだ。そんな中、熱心に写真を撮りながら進む猛、その猛と並びポツリポツリと話しながら進むキヨ君、そして次の休憩ポイントを目指し、ひたすら無言で歩き続ける菜津子と、私達は三人三様にバングル・バングルを経験していった。

内部のもろさが垣間見える岩


 夕方近くになって、私達はバングル・バングルを望む高台に向かった。前日見るはずだった、夕焼けを見に。

 もともと赤みを帯びているバングル・バングルは、夕日の光を受けて真っ赤に染まった。かと思うと、次の瞬間には輝くばかりのオレンジ色を浮き立たせる。昼間“ただの山”だと一瞬でも思ってしまった私達に猛省を促すかのように、そのすごさを見せつけてくれた。
 自然の素晴らしい姿は、私達を無言にする。日が沈むまでの数十分間、私達はひたすら山を見つめ、その変化を堪能した。

きれいな夕景と・・・ベヴンの顔の小ささを実感した瞬間。。。


 そして、この素晴らしい自然は人間の心も溶かしたらしい・・・。

 日がほとんど沈み、みんなが何となく一ヶ所に集まり始めた頃、私達は少し離れた所に並ぶ二つの影を見つけた。その影こそ、
ここ数日ケンカ中だった例のカップルであった。その光景を目にした参加者一同、みんな自分のことのように喜んだ。そう、いくらカップルにケンカは付き物とはいえ、“いえいえ、僕達はケンカなんかしてませんよ”と一生懸命アピールする彼の姿は徐々に痛々しく映り始めていた。仲良くしてほしいなと思うのが人情というものなのだ。

 美しい自然とカップルの仲直り、後者が“今日の出来事”として大きな比重を占めてしまったことに軽く驚きながら、私達は前日と同じキャンプ地に戻っていった。

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