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Day.35-2002.08.17 Day.34 へもどる
 ツアー最終日。今日は楽しみにしていた“ウビルー”への旅。途中、“マムカラ・バード・サンクチュアリー(Mamukala Bird Sanctuary)”に立ち寄った。
 ここは、水鳥の楽園。見事な湿原である。鳥達が実にのびのびと暮らしている。“湿原”という言葉はオーストラリアの乾いた大地とはなかなか結びつかないが、カカドゥでは、今までのイメージを良い意味で裏切る風景に数多く出会うことができる。

マムカラ・バード・サンクチュアリー。この時期は鳥も少ないようだ



 午後、私達はウビルーに到着した。“長時間歩くから、必ずお水を持って”というスティーブの言葉に、参加者はみんなお水の入ったペットボトルを持参してバスから降りた。
 ここで私達3人組、重大なミスを犯してしまう。“長時間歩く”という言葉を聞いた瞬間、3人の頭に浮かんだのは“荷物を少なくしよう”だった。今までのトレッキングで、荷物が少ない方が楽だということを身にしみて感じていたからだ。そして出した結論。1リットルのペットボトルを1本、3人でシェアすることにした。

 かつてこの地域には、先住民であるアボリジニの人々が多く暮らしていた。そして、彼らの生活の知恵がロックアートとして残されているのが“ウビルー・ロック”である。あらゆる情報の伝達が、絵で表現されているのだ。それぞれの絵がどれも力強く、命を感じさせる。それはそうだろう。私達が見た多くの絵は、狩の方法や獲物の居場所、そして民族に語り継がれる伝説など、生活に直結するものばかりだ。
 特に印象に残ったのが、2頭のカンガルーの絵。明らかに描き手が異なると思われるそれは、父が描くカンガルーをまねて子が練習したものだろうと言うことであった。自分達の獲物となるものを教え、さらに狩の方法を教える。それを次の世代がきっちりと引き継ぐことによって、アボリジニの人々の血はこの地で長い間守られ続けてきたのであろう。

右の絵が子供による“練習作”


 アボリジニの人々が何千年も前から暮らしてきた土地にイギリス人がやってきて、英国による支配を宣言しオーストラリアという国が作られた。本格的な上陸が行なわれた1月26日は、“オーストラリア・デイ”という建国記念日のような祝日にあたる。国の成り立ち、アボリジニの人々の気持ちを思うと何とも複雑な日ではあるが、毎年毎年かなり大々的に祝賀行事が行なわれている。



展望地からの眺め。



 時間は午後1時過ぎ。素晴らしい壁画を見学する私達の頭上には、厳しい太陽の光が降り注いでいた。暑い。想像以上に暑い。私達3人は、“たった1リットルしかない”お水を、大事に大事に飲んで、、いなかったのだ。お水があと3分の1くらいに減るまで、何も考えずに気の向くままに飲んでいた。何しろ暑く、立っているだけで汗が吹き出るのだ。喉が渇くのは当然だろう。

 そして、私達のツアーガイド“スティーブ”である。
 ここは文化的に保護された地区なので、それぞれの壁画の前には説明ボードもちゃんと備え付けられている。つまり、彼が誘導さえしてくれれば、みんなそれぞれのペースでロック・アートを見て理解することが可能なのである。しかし、彼はそれを許さなかった。全員一緒に移動して、一ヶ所で少なくとも5〜10分は説明する。これが“とっておきの裏話”だったり“ちょっとした小話”だったら、また違ったのだろうが・・・。

 とにかく、彼の話は長い!!面白いとか面白くないの前に、長すぎるのだ。
 こんな事を言っては怒られそうだが、小中学生の頃、朝礼のメイン・イベントであった“校長先生のお話”を思い出させる。
 今はどうかわからないが、昔の校長先生は誰も彼も話が長かったような気がする。年に一度くらい、10分くらいでお話が終わることがあったりすると、全校生徒の間にどよめきが起こるくらいだった。

 今思えば、きっと色々と為になるお話をして下さっていたに違いないし、特に小学校の校長先生の場合、6歳も年齢に開きがある子供達が理解できるように話をしなければいけないのだから、きっと大変なご苦労のもと、念入りな準備をされた上でのお話だったのだろう。が、当時はただただ長く感じたものだ。

同じく展望地から。
ここから先には、アボリジニのふるさと“アーネム・ランドが広がっているという。”



 そして、スティーブの話における最大の欠点。彼は“空気を読まない”のだ。
 普通に立っているだけで十分暑いのに、集中して話を聞くというのは、かなりエネルギーを使う。参加者のほとんどは、途中であきらかにため息をついたり、集団から離れようとしている。それでも彼は何の動揺も見せず、話を続けるのだ。

 たった1リットルしかないお水を3人で分けていた3人組。そう、私達の犯した重大なミスは2つ。オーストラリアの大地を軽視し、スティーブの話の長さを計算にいれていなかったことだった。

 時間が経つにつれ、私達は壁画に集中できなくなってきた。新しい壁画を目にした瞬間は“きれい”だとか“すごい”とかという感想を持つのだが、そこから先はひたすらスティーブの手に握られている大きな大きなお水のボトルに目がいってしまうのだ。このスティーブ、私達の窮状を知ってか知らずか、実においしそうにお水を飲んでくれた。
 ここで体験した水に関する経験は、以来今日に至るまで保正家の“お出かけセット”に大きな影響を与えている。つまり、車で5分ほどの場所に買い物に出かける場合でも、お水がたくさん入った水筒を必ず携帯するのだ。


 この後、もう一ヶ所立ち寄る予定だったが、時間がなくなったため(当然といえば当然だが)そのままダーウィンに戻ることになった。ダーウィンに到着したのは夜7時30分頃。荷物を置いて、そのまま向かったのは“ビクトリア・ホテル”という場所。ここで、参加したツアー会社提供の夕食が無料で食べられるのだ。
 レストランでは多くの人が食事をしていた。ツアー終了後に食事が提供されると言う仕組みなのだが、旅行者が集まる時期なので、ツアーを終えた人がたくさんいるのだ。

ダーウィンの町並み。残念ながら、私達は“夜のダーウィン”しか見る事ができなかった


 ここで、前回のツアーで一緒だった人と再会。じっくりと再会を喜びたいところだったが、何と私達には、またまた翌日からのツアーが待っていた。慌しく挨拶を交わした後、コイン・ランドリーに走ったのはいうまでもなかった。

 翌日から、いよいよ“大陸のど真ん中”へ向けた旅が始まるのだ。


 
 
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