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Day.10-2002.07.23 Day.9 へもどる
 今日はチェックアウトの日。基本的に朝10:00までに鍵を返さなければいけない。猛は風邪をひいてしんどそう。。。この風邪は、菜津子が10日以上引きずっていた風邪だった。おかげで菜津子は絶好調だが、何といっても荷造りは猛の得意分野。彼の指導のもと、何とか朝食前に荷物を整理した。
 チェックアウトはしたものの、インディアン・パシフィックの乗車時間までは、あと7時間ほど。時間は十分すぎるほどある。シドニーですっかり“教会建築”のとりこになった猛の希望もあり、散策中に見かけた教会を訪ねることにした。
大聖堂をバックに。大通りの両側に広々とした芝生の空間が
広がっているのも、オーストラリアならでは。
 バスで鉄道の駅まで行き、そこから歩いて約20分のところに“聖ペーターズ大聖堂”はあった。それはとても高い建物で、メルボルンで見てきた教会とは、少し趣が違うような気がした。“何が”と説明は出来ないのだけど、例えば雰囲気だとかステンドグラスの装飾だとか、何かが違ったのだ。

 この教会で、私たちは初めて“レディース・チャペル”というものを知った。これはマリア様をお祀りしてあるもので、聖堂の裏手、キリスト様の後ろに設置されていた。
 前述の通り、私たちは仏教徒で、キリスト教に関する知識がほとんどない。せっかく色々な宗派の教会を訪ねても、教会というのは興味深いな、と思う程度である。
 ただ、キリスト教徒の知人によると、キリスト教にも色々な思想があり、中にはとても偏ったり過激な思想をするものもあるので、あまり気軽に足を踏み入れない方が良いというのだ。確かに、“あの教会は良くない”とか“私たちの教会は・・・”という話をよく聞く。オーストラリアに来て以来、友人・知人からキリスト教への改宗を勧められることがある。でもやはり私たちは、仏教の方が落ち着く。とはいえ、何か信じられないことが起こった時には“オーマイゴッド!”とか“ジーザス・クライスト!”とか叫んでしまうけど。

休憩がてら、この銅像から見える大聖堂を体感。

 教会を出ると、雨が降っていた。雨宿りを繰り返しながら何とか駅まではたどり着いたものの、さあ困った。お天気が悪い上に、中途半端に時間が空いてしまっている。駅の上には何があるか、、、そう、カジノである。雨宿りできる上にドリンクが無料だ。(多くのカジノでは、コーヒーやジュースを無料サービスしている)結局私たちは、昨日と同じ服装でカジノに向かった。
 猛は本日も勝利で+A$50。対する菜津子は、−A$25で負け。菜津子はここで第1回目の、“もうカジノには行かない”誓いを立てる。

 インディアン・パシフィックに乗り込む前に、食料を調達しておく必要があった。何といっても2泊3日の旅になるのだし、私たちには予備知識がほとんどなかった。食堂車があることは知っていたけど、売店があるのか、途中の駅で買い物をする時間があるのかも。備えあれば憂いなし、である。私たちはCentral Market(セントラル・マーケット)という市場に向かった。ここには八百屋さんやパン屋さん、魚屋さん等がお店を並べている。ぐるぐる歩き回って、例の“パンとバナナ”とタコのマリネ、あと、とびきり安かったみかんを買う。

 カニやロブスターなどのシーフードで有名なオーストラリアだが、意外にシーフードは高い。そしてスーパーに並んでいるシーフードは、あまり美味しそうに見えない。更に、全て量り売りなので、たとえむき海老でも、“1kgあたり20ドル"などど表示されている値段を見ると完全に腰が引けてしまうのだ。結局みんな、1kgパックで10ドル位のお肉を選んでしまう。
 我が家もご多分にもれず、シーフードなんて買ったことがなかったが、比較的お求め安い価格で売られているのが、イカやタコである。なぜかというと、タコを嫌いな人が多いからかな?と思ったりもする。見た目がグロテスクだからかな?オーストラリアのスーパーで、足つき皮ツきのイカを見たことがない。みんな処理済のものばかりだ。タコに関していえば、スーパーで売られているのは子ダコなので、きっと"分解"できずに隅の方でひっそりと売られているのだろうと思う。

これが“マンダリン・オレンジ”
 みかんはオーストラリアで栽培されていて、”マンダリン”と呼ばれる。詳しいことはわからないけど、日本で食べているもののほとんど同じだと思う。北京語のことを英語で”マンダリン”というのだが、多分中国に起源があるのか、とにかく中国に関係した何かがあるからこういう名前がついているのだろうと思う。だが、友人のチャイニーズは、このみかんを目にするたびに"間違った解釈だ。僕の国では誰もマンダリンなんて言う名前を知らない"とぼやく。世界中から人が集まった"移民の国"でありながら、"間違った文化"があちこちに存在するのも事実。

 マーケットからボトルショップに移動し、ワインを買う。寝台車をあきらめた菜津子に、猛は優しく"好きなワインを選んでいいよ"と言った。"あ、重くなるからカスクね。当然" ・・・。
 その後、スーパーマーケットに行って、お水とお菓子を買い込む。こんな大荷物、持ち込めるかしらとちょっと心配しながらバッパーに戻った。

インディアン・パシフィックのシンボル、エッジ・テールド・イーグルを前に。
背中にバックパック、前に寝袋を抱えるラウンド定番スタイル。

 インディアン・パシフィックが出発する駅は、アデレードの西部にあるKeswick(ケズヴィック)駅。バッパーの人が車で送って行ってくれるので安心だ。駅についてから乗車手続きをし、期待で興奮を抑えきれない菜津子は、ウロウロと歩き回る。猛は相変わらずしんどそうだったが、相方が落ち着かないので、仕方なく荷物の番をする。駅は人で一杯だった。数ヶ月前に乗車した友人の話では、ガラガラで座席を2つとって横たわることができたというが、この状況ではかなり窮屈そうだ。

一見地下鉄と思われそうですが、これがインディアン・パシフィック!です。

 発車時刻は6:30の予定だったが、大幅に遅れて7:00に駅を出発した。予想通り、座席はほぼ満席だった。ちょっと空気が悪い。有名な話だが、西洋の人はかなり体臭が強い。ものの本によると、これは魅力的な要素で、いわゆる"フェロモン"の部類に入るらしいのだが、日本人には少々強烈なことも多々ある。特にこんな密室では・・・。

 自分たちの席を何とか落ち着けるスペースに整え、私達はタコのマリネをつまみにインディアン・パシフィックに乾杯した。とその時、車掌さんがやってきた。まぁこれから長い旅になるわけだし、"ご乗車ありがとうございます。ごゆっくりおくつろぎ下さい"なんていうあいさつ回りかな?と思った私達はかなりの"あまちゃん”だった。彼が言いたいことはそんなことじゃなかった。

1.車内にアルコールを持ち込んではいけない。アルコールは食堂車で販売しているから、そこで買って食堂車もしくはラウンジカーで飲みなさい。
2.車内での盗難に気をつけなさい。万が一盗難被害の届出があった場合、全員の荷物検査が終了するまで、何人も電車を降りることは許されない。
3.席の移動を勝手にしないこと。

座席車両の内部。前面のちーーーーっちゃな画面で映画が上映される。

 そして最後に"映画のビデオを上映しているから、まぁゆっくり楽しんで"と言い置いて、彼は去っていった。
 この時点で、ちょびっとブルーな気持ちの保正家。・・・何だか修学旅行みたいじゃない、これって?
納得はいかないけれどルールはルール。そそくさとワインを隠し、トラベルマグにワインを注ぎ、こっそりワインを楽しむ作戦に変更。
外はすっかり真っ暗。周りもほとんど外灯らしいものもなくどこまでも闇が広がっている。日本ではなかなかお目にかかれない暗さだ。

 長距離列車だけあって、トイレは勿論シャワールームもついていた。使用している人は少なかったが、珍しい物好きの私たちのこと。いうまでもなく挑戦。意外に中は広さがあり、シャワーも普通に出る。至って快適な設備だった。いつもと同じようにシャワーを浴び、いつもと同じように歯を磨き、明日からの景色に期待しながら10:30ごろ眠りについた。
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