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Day.22
-2002.08.04
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朝6時30分。普段寝起きの極端に悪い菜津子にしては珍しく、鮮やかな早起きだった。まだ寝ている2人を部屋に残し、まず最初にした事はお弁当作り。本日は“移動日”のため、1日の大半をバスで過ごす。バスの中で好きな時に食べられるよう、おむすびを作ったのだ。ポートヘッドランドに雨が降りそうなくらい、(残念ながら降らなかったけど)珍しいことが続いて起こった朝だった。
道の向こうから、静かに夜が明けていく
その後散歩に出かけ、ポートヘッドランドの美しい朝を満喫した菜津子。バッパーに戻って2人が起きる前にコーヒーを楽しみ、またまた“最高の日曜日”を過ごした。
バスの出発時間は午前11時。バス乗り場まで送りながら、ゲイリーが町を案内してくれることになっていた。
荷物をまとめ、ゲイリーや彼のお母さんのEunice(ユーニス)と写真を撮って慌しくさよならを言い、バッパーを出たのが10時20分頃。あまりじっくり見て回ることは出来なかったけれど、町を眺め、改めて“また来たい”と思った。
一度顔を見せた太陽は、ぐんぐんとその輝きを増しながら昇っていった。
バスステーションでゲイリーにお礼を言って別れ、私達はバスを待つことにした。と、そこにあったのは、この町に不自然なくらい高くそびえる塔。どうやら展望台らしい。そこに登れば、町全体が見渡せるというのが売り文句。この塔に、なぜかキヨ君がぐぐっと惹かれた。どうやらキヨ君、高いところが好きらしい。・・・確かに、好きそうな感じではある。対する猛は、、、“お金を払ってあんな所に登るなんて、信じられない”とまるで無関心だ そう、何の弱点もないかに見えた猛、実は高い所があまり得意ではない。
私達の周りには他にも、高い所があまり好きではない人がいる。そして、彼らにはある共通点がある。それは“絶叫マシーンが大好き”ということだ。普通に考えると、絶叫する前に高いところに上らなくてはいけないあのテの乗り物は、彼らが避けるタイプのものではないかと思うのだが、そうでもないらしい。
キヨ君の見た、ポートヘッドランド。“海の青”に対するのは、どこもかしこも“鉄の赤。”
何年か前、最大級の高さとスピードで話題になった“
フジヤマ
”というジェットコースターに、会社の先輩達と乗った時のこと。運悪く、私達のグループは先頭から3列を占める羽目になった。そこで一番前に乗り込んだのが、猛と、同じく高い所があまり好きではない先輩。ジェットコースターが坂の頂点に向かっていく間、最前列からは“マジこえー”とか“ありえないっすよ〜”という的外れな叫び声が聞こえていたが、坂を下がり始め、“キャーッ”とか“ギャー”という絶叫が周りで聞こえている間、彼らは両手を高々と挙げ、“サイコー!”とはしゃぎっぱなしだった。まぁ、苦手な高いところから下りることが出来るのだから、最高な気分なのかもしれないけど。
何はともあれ、“高い所大好き!!!”なキヨ君は、タワーに登っていった。辺り一面真っ赤な乾いた町を見渡したキヨ君は、何かを感じとっていた。多分。
下で待つ2人。町中が赤茶けているのが良くわかる
いつものごとくバスは遅れ、私達は11時20分に出発。ポートヘッドランドに別れを告げた。途中線路を渡る時に、ものすごく長い列車を発見。鉄鉱石を運ぶための貨物車で、その長さ何と2.6km!なのだそうだ。
途中何度か休憩をはさみながら進むこと約7時間半。夜7時頃、バスは
ブルーム
に到着した。実は私達、ブルームでの宿を予約していなかった。今までの例から、きっと黙っていても宿は見つかる、バスステーションで見つけようと、甘く考えていた。
しかし、迎えに来ていたバッパーはたったの2軒。しかも予約客を乗せると、すぐに出発してしまった。
これが2.6kmの貨物列車。とにかく長い。
私達の知らなかった衝撃の事実。実は当時のブルーム、“売り手市場”に加え、質の良いバッパーが少ないらしい。バスで知り合った日本人の女の子に聞いた情報によると、1軒を除き、あとはひどいものだとか。。。3人組、ちょっと焦った。しかもそのバッパーは、
ドミトリー
で1人1泊$28だという。しかし、とりあえず今夜の宿を確保しなければいけないし、他のバッパーを探すのは大変そうだった。仕方なく、その“1軒”に行ってみることにした。
“Kinberley Klub(キンバリー・クラブ)”というそのバッパーは、確かにきれいだった。バッパーだけではなく、ホテルも併設されていて、リゾートムード満点だ。ほぼ満室であるところにもぐりこんだ私達は、かろうじて空いていたドミトリー2部屋に分かれて泊まることになった。初めての“1人ドミトリー”を経験することになった菜津子。既にこれ以上ないくらいブルーになっていた。対するキヨ君と猛は、同室にはなったけれども遠く離れたベッドで、別室とあまり変わらない。くどいようだけど、これで
28ドルは高かった
。
これまた混雑したキッチンを使い、何とか夕食を済ませた私達。少しのんびりした後、それぞれの部屋に戻っていった。
灼熱の地へ向かう、どこまでもまっすぐな道。
ほぼ一日中バスの座席で過ごしたこの日。シャワーを浴び、サッパリとしてベッドにもぐりこむ予定だった。時刻は11時頃だっただろうか。部屋に入った菜津子は、戸惑った。“部屋の電気が消えている・・・?”みんな外出中かと思ったが、更に驚いた。・・・みんな就寝している!
この光景、バッパーではかなり珍しい。勿論みんながそれぞれ旅行中なので、翌日の出発時刻によっては早寝をする人もいる。しかし1部屋10人近い人が全員、夜11時の時点で眠っているという光景はなかなか目にするものではないのだ。
早寝の人が多い部屋に当たったのだと、自分を納得させた彼女。荷物を出してシャワーを浴びに行こうと、バックパックのファスナーを静かに開け始めた。
ジッジジー・・・
間髪を入れず
“チッ!” “フゥッー!!!
”
そう、聞こえたのは、ファスナーが開く音の3倍位の勢いがする大きな舌打ちとため息だった。そして、ベッドに起き上がってこちらをにらみつける人。。。え??? えーーーー!? 開けちゃダメ?
暗闇の中、見えぬ圧力に負けてバックパックを開けることもできず、菜津子はそーーーっと寝袋にくるまった。そして、更に大きな部屋に宿泊した猛とキヨ君も、広い部屋に響き渡る“ジジーッ”に苦労していた。
ポートヘッドランドにもう少し滞在すればよかったと後悔ながらも、明るい朝が必ずやってくることを信じ、3人は眠りについた。
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