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Day.48-2002.08.30 Day.47へもどる
 キヨ君に別れを告げた翌日。保正家の雰囲気は最悪だった。


 実はここ数日、保正家の雰囲気はあまりよろしくないままであったのだ。それでも色々な行事があったり、何よりもキヨ君がいてくれたおかげで、最悪の事態は何とか避けられていた。ところが、二人になった今、ブレーキをかけるものが全くなくなってしまったのだ。

 そして、二人とも今まで経験した事の無い長旅によって、色々な意味で疲れが溜まっていた。喧嘩するなというのが無理な話かもしれない。

 この日も、些細な事に端を発し、“ごめん”の一言で終わるはずの言い合いが、長い長いケンカへと発展してしまっていた。


 一度ケンカしてしまうと、“鎮火”まで時間のかかるのが菜津子。ケンカしても問題が解決すれば、平静な状態にパッと切り替えられる猛。ケンカした後、二人の様子は全く逆なのだ。


 ところがこの日は少々様子が違った。思わぬ敵が猛を遅い、以後何日も彼をご機嫌斜めにしてしまったのだ。

この日唯一撮影された写真。買物の途中の風景


 彼を襲った敵の名は、“サンドフライ”。これが正式な名前なのかは、実はよくわからないのだ。ある人は同じ症状でも“ミジーに刺された”と言うし。。。

 とにかくこのサンドフライ、暑い地域に生息する蚊の一種なのだそうだ。何故“〜なのそうだ”というのか? 実はこの蚊、人の目には見えないくらい小さく、人は自分が刺されたことに気づかないのだ。

 つまり、数十分後、そう、刺された瞬間ではなく数十分後に猛烈なかゆみに襲われた時、人は初めて刺された事に気付くのだ。そして更に厄介な事に、このかゆみは同じ強さで一週間から2週間続く・・・。


 猛がいつ刺されたのか、私達には皆目見当もつかなかった。ただ、ゴールドコーストよりも格段に暑いケアンズにいる以上、いつ刺されてもおかしくない状況ではあったのだ。

 同じクイーンズランド州でも、ゴールドコーストとケアンズは気候が異なる。ゴールドコーストが一応四季を持つ温帯であるのに対し、ケアンズは雨季と乾季を持つ熱帯であるのだ。


 猛烈なかゆみと手足の腫れに襲われた猛。見ているだけで痛々しいが、“前回よりはましかな?”と、以前おたふく風邪で腫れ上がった顔を猛に“記念撮影”された経験を持つ菜津子は、かなり冷静に観察していた。


そう、猛がサンドフライに襲われたのはこれが2回目。そして前回は上半身裸で短パン、ビーチサンダル履きという、いわば“どこからでもかかってきなさい!”という状態で被害にあったのだった。

この時の様子を、何と表現したら良いのだろう。まず最初、全身のブツブツを見て、猛はジンマシンだと思った。“野外キムチ鍋”を楽しんだ後だったので、キムチに当たったかな?と。意外に繊細なのだ。

ところがそのブツブツが消える様子は一向になく、かえって大きくどんどんかゆくなっていく。これはジンマシンではないと後日病院に行った猛が知った、衝撃の事実。

“これはサンドフライですね。かゆいでしょ? かゆみ止めを塗って下さい。

そして更に、親切な看護婦さんが軽くアドバイス。

”あ、それから、抗体の無い人は一生抗体ができませんから、気をつけてくださいね。実は私もなんですよ。辛いですよね・・・。”


蚊に刺されたての元気一杯の痒みが2週間続く・・・


この日から約2週間、猛はかゆみでほとんど眠れない日々を過ごし、痒みを抑えるため、文字通り氷と扇風機を抱いてこの苦境に耐えたのだった。


あれから約半年。


 服を着ていた分マシと言っても、かゆいものはかゆい。ましてやバッパー滞在中の身なので、あまり装備も良くない。更に、薬局に売っているかゆみ止めは何の役にもたたず、仕方なくお水のボトルを当てたり、お水のシャワーを浴びたりして、何とかしのぐしかなかった。


 数日後、日本でお馴染みの“スーッとするかゆみ止め”をある人から頂くまで猛の苦しみは続き、保正家のケンカはアクシデントによって思わぬ形で幕を下ろしたのであった。
Day49へつづく


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